2023年02月17日
新人研修
企業の新人研修を徹底解説!Z世代に向けた研修の最新事情とは
昨今の新入社員は2000年代生まれとなりました。
Z世代と呼ばれる彼らに今までと変わらない新人研修をしていても、価値観の相違から十分な結果は得られないでしょう。
Z世代側からも共感を得られる研修へとアップデートできる企業こそ、時代の流れに乗って更なる成長が期待できるはずです。
Z世代以前の企業研修「新人研修」とは
新人研修の目的
企業研修として新入社員が最初に受ける研修は、新人研修と呼ばれます。一般的に、3~6ヵ月の期間が設定されることが多いです。
「新規採用した人材」から「その企業の重要な人財」へと成長してもらうための第一歩として位置づけられます。人事部付から各部署へ巣立っていく前に、社会人として、一社員として身につけてほしい内容が盛り込まれていると言えるでしょう。
一方、中小企業では新社会人向けの研修全てが、配属現場でのOJTに委ねられている場合も少なくありません。
企業の新人研修の目的は主に、以下に集約されます。
1 学生気分から、社会人として責任をもって勤務するためのマインドセット(意識改革)
2 自社の業界について、また、企業独自の特徴やルールを知ること
3 自社への帰属意識を高めること
従来型の新人研修
目的達成のために、多くの企業は、あらかじめルーティン化したメニューを持っています。入社時の新入社員の能力や個性のバラつきを読み取り、その平均値を底上げするイメージで、その年次ごとに重点を見直した研修を設定することが課題でした。
またその手法は、一室に集めた座学、その中でのグループワークなど、新入社員にとっては受け身の授業のような形式が主流でした。大量採用が主だった時代には、それが効率的でもあったのです。
入社時から形成する自社への帰属意識・忠誠心の形成・同期との絆も、無視できません。ゆくゆくは、組織に馴染む過程で培われていく、業務遂行上の重要なソフト面であるからです。
株式会社i-plug新入社員研修の目的とは?目的の決め方や代表的な研修内容を紹介
新入社員が受ける新人研修の内容例
社会人としての基礎知識を習得させるため、上記の1~3の目的の為に実際にはどのような研修が広く行われているのでしょうか。
1 新社会人としての意識改革のために
- ビジネスマナー(挨拶/名刺交換/電話や来客・訪問のマナー/メールマナーなど)
- ホウレンソウの重要性
- 基本的なOS操作
- コンプライアンスについて
2 自社や業界への理解を深めるために
- 企業のパーパス・ミッション・ビジョン・バリュー、沿革などの理解
- 各部署の業務内容についての講義、利益構造についての理解
- CSRについての理解
- 業界の構造の理解
- 取引先との懇親会
3 組織になじむために
- 親睦会・レクリエーションイベントなど
新入社員だった時期は年々過ぎ去っていきます。終身雇用の時代が終焉を迎え、スタートアップを中心に社員研修の形態は様変わりし始めていました。たとえば、キャンプでのチームビルディングや、ヒッチハイクをさせてコミュニケーション能力の開発を図るなど、ユニークな手法を試みる企業も増えてきていたのです。
そのような中、コロナ渦で、企業側は採用活動を含め柔軟にオンライン対応に切り替える必要に迫られました。一方、新入社員側のバックグラウンドも変化しています。
企業研修としての新入社員教育の根本的な意義の見直しや、オンラインとリアルの良いところ取りをする仕組み作りが急務と言えるでしょう。
昨今の新入社員であるZ世代に合った研修モデルを刷新していくことが、企業の成長につながるのではないでしょうか。
出典:
HRドクター新人研修の事例を大公開!目的と研修内容、コツや注意点を徹底解説!
【2023年最新】本当におすすめしたい新人研修31選!選び方のポイントも解説
Z世代に向けた社員教育の対策
まず新入社員の世代について理解しましょう。1990年代後半から2010年代の序盤に生まれた人たちが「Z世代」に該当します。
このZ世代には、生まれ育った時代背景や環境から次の様な特徴が見えてきます。
Z世代社員に見られる特徴① 競争を好まない
Z世代は少子化にともなう受験戦争の鈍化や教育の変化により、競争を強いられる機会が少なかった世代です。たとえば、今年(2023年)の新入社員が大学へ入学した2018年の競争率を見てみると、大学志願者数に対して、大学の定員が90%を超えています。受験競争を生き抜いてきた世代と比べ、競争をして勝っていくことにあまり重要性を見出さないという特徴は、こういった社会背景もあると考えられます。
Z世代社員に見られる特徴② 自己評価が高く承認欲求が強い
スマートフォン利用者が爆発的に増加した2010年ごろに中学、高校時代を過ごし、オンラインやSNSでのコミュニケーションに抵抗意識が無いことも特徴の一つです。SNSで映えを意識して「いいね!」を獲得することに意欲があり、他者に認めてもらいたい、ほめてもらいたい、といった承認欲求が強いという特徴を持っているというのもこの世代に見られる特徴の一つです。
Z世代社員に見られる特徴③ 安定を好む
Z世代は幼少期から青年期にかけて、リーマンショックや東日本大震災など、社会不安を経験した世代でもあります。そのため、将来に不安を持ち、安定を求める傾向にあるようです。内閣府が2017年に行った調査によると、仕事を選択する際に重要と考える観点について、「安定していて長く続けられること」及び「収入が多いこと」に、「とても重要」または「まあ重要」と回答した者は、ともに88.7%で最も多い、という結果にも現れているようです。
こういった特徴を持つ新入社員(Z世代)はどういった社員教育を望んでいるのでしょうか。
Z世代に向けた社員教育の対策① 個性を重視
先述の「競争を好まない」は排他的であるという事ではなく、「個性を大切にする」意識により反映されているようです。その背景には、SNSネイティブと言われるZ世代は国や文化を超えた多様な人々の生の情報がタイムリーに得やすくなったことが挙げられます。彼らは自分とは違うカルチャーや考えを持った人たちの価値観に早くから触れています。その中で異なった個性を認め、認められる、という意識が芽生えたとしても不思議ではありません。
Z世代に向けた社員教育の対策② 褒めて伸ばす
Z世代はSNSで「映え」た動画や画像をアップして「いいね!」やフォロワーの数が伸びることに喜びを感じています。そんな彼らにとって他者から認めてもらえる、というのは重要なファクターの一つです。これは、他者からの評価をとても気にしていることの表れでもあります。また、人前で失敗をすることに大きな不安を持っているのもこの世代の特徴です。
個性を重視するZ世代には、社員それぞれの個性を見出して伸ばす教育が求められているようです。
Z世代に向けた社員教育の対策③ 長期育成
不安定な社会情勢を見てきたZ世代にとって、安定して収入を得られることも一つの重要な要素として挙げられます。実際、Z世代を対象としたアンケートで見られる仕事についての回答には、安定した収入に関連する不安が多く見られます。解雇されないか、何歳まで働けるか、また、老後の年金はどうなるか、などが上位に挙げられます。そのため、継続した学びについては、75%以上が積極的もしくは条件次第で希望する、と回答しています。
一方で、Z世代の転職に対する意識調査では、否定的な回答をしたのは20%未満で、多くのZ世代が積極的もしくは肯定的に捉えています。
このことから見えてくるのは、安定した収入を求めつつ、必ずしも一つの会社にとどまることを良しとしている訳ではない、という考え方です。就職をしても継続して学び続け、必要があれば転職をしてでも安定した収入につなげたいというZ世代の新入社員の思いが見られます。仕事に対して現実的且つ柔軟性のある考え方をしているという点で、前の世代とは異なった特徴でもあります。
企業にとって、人材育成のゴールは企業の目的を達成することにあります。今後の労働力減少が懸念される日本市場において、せっかく育てた優秀な社員が研修後に退職するということがあっては、企業としても成長が見込めません。社員教育は入社時に一度やって終わりではなく、個性を伸ばす研修を継続的に行うことが重要です。また、研修で得たスキルを実際の業務で活かせる環境を作り出すことも必要かもしれません。安定した成長を続ける社員による貢献は、企業の安定した成長につながるとも言えます。
ここで一つ留意しなくてはいけないことがあります。それは、今春以降新卒で入社する社員は、3年間コロナ禍の学生生活を余儀なくされたことです。つまり、それまでの学生生活に比べ、対面でのコミュニケーションが著しく減少した、ということです。新人研修においても、オンライン研修のため、上司や同期との対面でのコミュニケーションの機会がないことに不安や不満を述べる社員も少なくありません。
これらのことを踏まえ、企業としてはZ世代に対してどういった研修を組めば良いのか、考えてみましょう。
出典:文部科学省「18歳人口と高等教育機関への進学率等の推移」
内閣府「平成30年版 子供・若者白書 特集 就労等に関する若者の意識」
PR Times「Z世代の約7割が新入社員研修で『会社への理解や帰属意識の高まり』を実感。一方で、対面コミュニケーションの活性化を求める声も」
Z世代に合った新入社員研修とは。具体例を紹介。
Z世代が入社するようになったこの時代、
彼らを迎え入れる側の私たちは世代間の価値観の違いを理解し、
融合する必要があります。
新たな価値観を受け入れ、活かすことが今後の企業価値や競争力向上につながるでしょう。
しかし、新たな価値を活かすといっても、右も左も分からない新入社員ですから、
人材育成に携わる者が学生から社会人に戦力化する責務があります。
従来の企業研修の通りでは成果が見込めず、悩んでいる方も多いのではないでしょうか?
そこで、Z世代が持つ傾向や特徴を認識した上で、
Z世代の特徴ごとにそれに合った具体的な施策を紹介します。
z世代の特徴①:自己評価が高い(「知っている」「できている」 感がある)
施策:アウトプット⇒インプットの経験学習モデルの導入
まず先に経験し、経験から振り返りを経て、次に生かす教訓や学びを得ます。
これは知らないことやできないことを実感し、学習の必要性を感じてもらうためのモデルです。
やり方は以下の通り。
・action 思い切って行動にうつす(不安・葛藤を乗り越え試行錯誤)
⇩
・reflection その経験。自ら学び次に繋げる。(上手くいかない経験からも学びを得る)
⇩
・focus 目的、相手の期待を具体化する(自分基準からの脱却)
経験学習の実践、内省、概念化、実践のサイクルは現場に近しく配属後も効果的であると考えられます。
z世代の特徴②「個」を重視する
施策:「自習タイム」を設け、パーソナライズ化された新人育成研修の実施
従来型の通り、新入社員全員が一律にゴール設定し、同一レベルのスキルを保有することは、
Z世代の成長過程に合いません。
自習タイムを通して「自育」のマインドを醸成します。
研修受講は新入社員にとって最初の「仕事」とし、
研修内容を理解し成果を出すことに、一人ひとり責任を持ちました。
このモデルではz世代の新入社員全員が同じカリキュラムを同時に受講するのでなく、
個々が「今必要なものは何か」を考え自らスキルを獲得します。
このために導入したのが「自習タイム」です。
研修の復習をするのもよし、研修では触れられない分野をe-ラーニングで学ぶのも良いでしょう。
「パーソナライズ化」された新入社員研修のスタートラインに立ちました。
出典:SEplus NTTデータにおけるZ世代の育成と従来研修からの変革変革
https://www.seplus.jp/dokushuzemi/blog/2021/10/onboarding_generation_z_in_nttdata.html
まとめ Z世代のネイティブさを組織改革に活用
これまでは「組織中心の世界」でしたが、これからは「個の尊重と組織目的を両立させる世界」にシフトしていき、現在はその転換の中にあります。
企業はその転換のやり方を模索中ですが、転換を起こそうとする人間が従来の価値観ややり方のままでは上手くいくはずがありません。
ここで注目したいのが、Z世代は生まれたときから新しい価値観で育った初めての世代であることです。Z世代は、企業が今目指している環境がむしろネイティブなのです。
本質的な価値へ目利きや、みんな違ってみんないいという考え方など、
変革に活かせる強みを既に持っています。
Z世代は時代の変化の鏡とも言え、Z世代の育て方・生かし方を考えることは、
単に新人育成という枠を超えて、企業組織をアップデートする機会にもなるでしょう。
出典:RECRUIT VUCA×WELL-being時代のニューノーマル
Z世代の新人・若手の育て方・生かし方
https://www.seplus.jp/dokushuzemi/blog/2021/10/onboarding_generation_z_in_nttdata.html