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AI・DX研修

2026年09月03日

事例

インタビュー・対談

まず動く。でも、見極める。─ 会社員10年、出産・育休を経て法人を設立して学んだこと

まず動く。でも、見極める。─ 会社員10年、出産・育休を経て法人を設立して学んだこと

勢いで会社を設立した私が、いま伝えたいこと

ソフィアコミュニケーションズの創業支援を通じて出会った方々にスポットを当て、起業ストーリーや今後の展望について紹介します

「正解はわからない。でも、とりあえず動いてみる」。株式会社yahDory(ヤードリー)を率いる佐川祐子さんは、そんなふうに一歩を踏み出してきました。 会社員として約10年、システムエンジニアの現場を歩いた佐川さんは、出産・育休を経て、勢いで会社を辞め、株式会社を立ち上げました。勢いよく飛び込んだからこそ得られたものと、「もっと慎重にすべきだった」という失敗の両方を、彼女は率直に語ってくれました。 これから起業や副業を考える人、法人化を迷う個人事業主にとって、「まず動く」と「見極める」をどう両立させるか…。そのヒントが詰まった話です。

「やればなんとかなる」を学んだ学生時代と起業への思い

「大学生の頃から、いつか起業したいという漠然とした思いはずっとありました」と佐川さんは振り返ります。

佐川さんの「まず動く」姿勢の源には、学生時代の経験があります。通っていたのは、設立されたばかりの新設学部。前例がなく、卒業制作の展示も、自主企画のアートプロジェクトも、先生も学生も手探りでゼロから作り上げるしかなかったといいます。

やればなんとかなる。やるか、やらないかなんだな、と。あの頃に体で覚えました」。

大学時代にプログラミングが得意だと気づいた佐川さんは、まず「ものを作る技術」を伸ばそうと、新卒でIT業界へ入り、そこで約10年、システム開発の現場でエンジニアとして経験を積みます。 忙しい日々のなかで、ふと思うのです。「起業したいと思っていたのに、そのための活動が全然できていないな」と。 くすぶりを抱えたまま、彼女は結婚・出産という節目を迎えました。

コロナ禍の孤独と、動き出すきっかけ

産休・育休に入れば、少しは自分のやりたいことができるかもしれない。そんな期待とは裏腹に、待っていたのは想像以上に慌ただしい育児の日々でした。折しもコロナ禍。生まれたばかりの子を連れて外に出ることもままならず、同じ立場の母親と話す機会もないまま、悶々とした時間が過ぎていきます。

「また、やりたいことができていない」。

二度目の停滞感が募っていたそのとき、ウェブニュースを通じて、近所に創業支援拠点「フェムベース池上」ができたことを知ります。 ちょうどコロナの波も少し落ち着いた頃。「行くだけ行ってみよう」と思い、佐川さんはそこで開催されていた交流会「マドレーヌお茶会」に足を運びました。 ここでの出会いが、すべてを変えます。フェムベースを運営する株式会社ソフィアコミュニケーションズ代表・林田との出会いです。
佐川さんは林田に対し、当時の自身の環境に根ざした事業アイデアを話しました。子どもをお互いに預け合いながら働ける、託児付きのワーキングスペースがあればいい、と。これに対し林田は、「すごくいいですね、事業化もできますよ」と背中を押してくれたそうです。

「あの出会いと後押しがなかったら、多分、起業していなかったと思います」。
ここでもまた、佐川さんは動いてみることで、道を開いていきました

単価を計算して見えた、「半月ずつ」の働き方

とはいえ、いきなり独立できたわけではありません。復職して働きながら、事業アイデアの壁打ちや、地域でのボランティアなど、1年以上の試行錯誤を重ねます。

転機は、働き方の発想を切り替えたことでした。

会社員時代の自分の単価から計算すると、半月フリーランスとして働けば、生計は成り立つ。ならば残りの半月を、挑戦したい事業に充てられるのではないか。 その考えを聞いた林田は、佐川さんの挑戦を支えたいという思いから、ビジネスにつながりそうな人を紹介していきました。紹介が紹介を生んだ結果、システム開発の仕事の目処が立ちます。

漠然とした願望を、そろばんを弾いて「これならやれる」という形に落とし込む。ここには、佐川さんの「まず動く」を支える冷静さが表れています。

動いたから、広がった縁 ─ 目黒区商工まつり

会社を立ち上げてすぐ、佐川さんは林田の紹介で「目黒区商工まつり」に参加します。運営ボランティアの合間に、自社で企画するコンサートのチラシを配らせてもらう、そんな話でしたが、得られたものは、それだけではありませんでした。

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林田(写真中央)の誘いで目黒区商工まつりに参加した佐川さん(写真右)

会場で紹介されたのは、地元・目黒区の区議会議員。コンサートの話をすると、その議員はその日一日、佐川さんを見かけるたびに声をかけ、区の副区長や地域のケーブルテレビ局の担当者など、自分一人では会うことも難しい方々を次々と引き合わせてくれたといいます。

さらにイベントブースでは、チラシを置かせてもらえることにもなりました。その日、子ども連れの来場者に直接手渡したチラシは、およそ300枚。「たった1日で、それだけの成果を出せたんです。それ以上に、将来につながる人脈を得られたことが大きかった」。

まず現場に出てみる。その一歩が、駆け出しの会社に確かな広がりをもたらしました

勢いで会社を辞めて ─ 見極めの甘さという失敗

ここまでは「まず動く」ことが実を結んだ話。けれど佐川さんは、自らの決断を美談にはしません。 「もっと慎重にすべきだった、と思うこともあります」と、率直に振り返ります。

案件の目処が立ってから会社員を辞めたとはいえ、それは見切り発車でした。 交わしたのは基本契約のみで、報酬が発生する具体的な業務契約は、まだ結べていなかったのです。 「実際に仕事をもらえたのは、半年以上も先でした。貯金で食いつなぎながらの船出でしたね。個人事業主として、生計をちゃんと確立してから法人化すればよかったかもしれない、とは思います」。

もう一つの学びは、人との相性の見極めです。「誰かに紹介されたから、というだけで信頼し切ってしまうのは、注意しないといけないと思いました」。自分にとって長く付き合える相手かどうかを、経験を積みながら自分の目でしっかり確かめること。生計の基盤を段階的に固めることと合わせて、これが佐川さんの何よりの教訓になっています。

飛び込む勇気と、相手や状況を見極める冷静さ。その両方が要る。失敗を通じて、佐川さんはそれを学びました。「とはいえ、わからないからこそ、まずはどんどんやっていくしかない、という面もあるんですけどね」。動くことと、見極めること。その両輪を回し続けるのが、佐川さんのスタイルです。

なぜ、動き続けられるのか ─ 社名「yahDory」の原点

そもそも、なぜ佐川さんはここまで動き続けられるのか。その答えは、社名の由来に表れています。

「yahDory(ヤードリー)」の原点にあるのは、「あまやどり」という言葉です。中学生のとき父親を亡くした佐川さんにとって、当時、自然と心を立ち直らせてくれたのが部活という「居場所」でした。 人は、心を休めて前を向ける場所さえあれば、また歩き出せる。「あまやどりのように、心が前向きになれる場所を作りたい」。それが事業の原点になりました。

商標の都合で「あまやどり」そのものは使えず、ChatGPTとの対話から、ギリシャ神話で「贈り物」に由来するとされる「Dory」の綴りにたどり着いたそうです。「出会う人ひとりひとりが、贈り物のような素敵な人なんだ」という思いも重ねられています。

今の売上の柱は製造業向けの受託開発ですが、佐川さんが目指すのは、地域の小さなお店に伴走し、ITでその魅力を育てる仕組みづくり。心から「やりたい」と思えるからこそ、失敗しても動き続けられる。その原点が、社名に込められています。

最後に ─ 佐川さんからのメッセージ

「失敗は、誰にでも起きます」と佐川さんは言います。 「失敗したときに頑張るのは、何かしら自分が楽しいと感じた記憶や経験がないと難しい。当然仕事だから楽しいだけじゃないんだけど、たまに訪れる楽しさがあるから、踏ん張って続けよう、と思える。自分はどんなことなら踏ん張れるのかを見極めたら、あとは泥臭く、失敗の原因を一つずつ取り除いていけばいい。失敗を全部取り除いたら、最後は成功するしかないと、私は信じています」。

まず動く。でも、見極める。勢いと冷静さの両輪で進んできた佐川さんの言葉には、説得力があります。

これから一歩を踏み出したい人に、佐川さんはフェムベース池上をこう勧めます。「マドレーヌお茶会で、いろんな人と話すのが本当におすすめです。何度も通ってつながりができてくると、一人じゃできないことに取り組めたりします。 またフェムベースに通うことで、集中して作業する習慣ができます。そうした積み重ねの先に、結果は出てくるんだと思います」。

「行くだけ行ってみよう」という小さな一歩から、すべては始まりました。佐川さんにとってのフェムベース池上は、動き出すきっかけをくれた、まさに「あまやどり」のような場所だったのかもしれません。

フェムベースは、創業する人を応援しています

佐川さんが利用しているフェムベース池上は、東急池上線・池上駅から徒歩5分の、東京都認定の創業支援・コワーキングスペースです。現在はバーチャルオフィス会員(月3,300円)と、イベントを開催できるイベント会員(月1,100円)を募集中。「こんなに安いスペースはなかなかない」と佐川さんも語る、はじめの一歩を踏み出しやすい料金が魅力です。 まずは月に一度フェムベースで開催されている「マドレーヌお茶会」から、のぞいてみませんか。

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マドレーヌお茶会のようす

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