2025年12月19日
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「一人で抱え込む起業」から抜け出し、事業を前へ。
目次
介護美容・長内麻紀穂さんが“事業の軸”をつかみ、ビジネスコンテストで大賞を受賞するまで
―介護美容「まき家」代表・長内麻紀穂さん× 事業計画コンサルタント・北村崇さん 対談
高齢者施設で「きれいでいること」を支えたい――。
そんな思いで介護美容「まき家(や)」を立ち上げた長内さんは、2025年11月に「湘南ビジネスコンテスト」で大賞を受賞しました。

第26回湘南ビジネスコンテスト ビジネス大賞・視聴者賞受賞のようす
引用元: https://www.shonan.or.jp/scns/contest/
今回の対談では、
・なぜ介護美容で起業しようと思ったのか
・どのように事業計画を固めていったのか
・北村さんの伴走支援がどう役立ったのか
・今後の事業展開や展望
について、長内さんと、その成長を支えたソフィアコミュニケーションズ(以下 ソフィア)のコンサルタント・北村さんに伺いました。

左から 本多(インタビュアー)、長内、北村
――まずは、お二人の自己紹介からお願いします。
長内:
介護美容「まき家」の代表、長内麻紀穂と申します。1993年生まれの32歳です。
出身は青森県の津軽で、いわゆる「田舎生まれ田舎育ち」です。新卒で上京して、千葉県で広告会社の営業職として6年ほど働きました。
祖母との思い出がきっかけで「介護美容」という世界を知り、原宿にある介護美容の専門スクールに一年間通いました。平日は会社員、日曜日はスクールという生活を経て、卒業後は夜勤の介護士と介護美容の二足のわらじで活動をスタートしました。
すぐに食べていけたわけではなく、「やっとご飯が食べられるようになってきた」のがここ1〜2年。今は北村さんに事業計画の伴走をしていただきながら、少しずつ事業を広げているところです。
北村:
ソフィアでコンサルタントをしている北村です。現在69歳で、定年退職後に独立してコンサルタントとして活動しています。
これまで20以上の新規事業立ち上げに関わってきていて、文具・事務用品メーカーで「アスクル」の立ち上げ時に設立準備室長を務めました。再生可能エネルギー関連の事業、システム開発など、様々な業種に携わって来ました。
実は私自身も40代で一度起業しました。インターネットのオーダーメイドECのビジネスモデル特許を出願しその事業化を目指しましたが、そのときは資金調達がうまくいかず起業に失敗した経験があります。その経験も含めて「これから起業する人たちには同じ失敗をしてほしくない」という思いで、今の仕事をしています。
起業のきっかけは「起業するしか道がなかった」から
――介護美容で起業しようと思った背景を教えてください。
長内:
一言で言うと、「介護美容をやるには、自分で仕事をつくるしかなかった」からです。
介護美容のスクールを卒業しても、雇用してもらう場所はほとんどありません。スクールから仕事を紹介してもらう仕組みもありますが、報酬はお小遣い程度。
「これは自分で事業として立ち上げないと、介護美容そのものの価値も下がってしまう」と感じて、起業を選びました。
その背景には、祖母との強い記憶があります。
私の祖母は、とてもきれい好きな人でした。部屋はいつもぴかぴかで、バスタオルもいい匂いがして、化粧気はないけれど「清潔さ」そのもののような人だったんです。
ただ、一人暮らしが難しくなって施設に入居してから、会うたびにどんどん祖母の表情は暗くなり、身なりも気にしなくなってきました。毎月美容室で髪を染めていた人が、同じ服を着続けるようになる。それを見るのは孫として本当に苦しかったです。
あるとき、祖母の誕生日に、祖母の好きな紫色のスカーフを買ってプレゼントしました。首元に巻いて、身なりを整えてあげたら、祖母の顔がふっと上がりました。
その表情が、私が子どもの頃から知っている「大好きな祖母の顔」に戻ったんです。そのことを母に伝えると、自分の母親の変化をとても喜んでくれました。
・きれいになる本人の気持ちが明るくなること
・それを見ている家族の表情も変わること
この両方を目の当たりにして、「きれいになることって、こんなに人を幸福にするんだ」と衝撃を受けました。
介護美容という仕事に対し、「なぜこんなに心が動くんだろう」と自分の原点をたどったら、この祖母との記憶にたどり着いた、という流れだったんです。
現場で知った介護のリアルと「ボランティアで終わらせない」決意

長内:
実際に夜勤の介護士として介護施設で働いたことも、介護美容で起業する後押しになりました。
外から見ると「ハイクラス」「高級感」とうたっている施設でも、中に入ると、現場は人手不足でギリギリ。服を自分で選べないどころか、衣類が汚れてもすぐに替えてもらえない…そんな現実も見てしまいました。
だからと言って、施設やスタッフさんが悪いわけではありません。人手不足などが原因で「今の体制では回らない」のが現実でした。
だからこそ、介護保険ではカバーできない「自費サービス」としての介護美容が必要だと強く感じました。
一方で、介護美容の世界には「思いはあるけれど、ビジネスとしての形がわからない」という人も多く、ボランティア化してしまうケースも少なくありません。「思いだけで終わらせない」「ちゃんとお金が回る仕組みをつくる」ことも、自分の役割だと感じています。
北村氏との出会いと対話によって見えた今後のビジョン
――北村さんとの出会いはどのようなものでしたか?
長内:
きっかけは、信頼している前職の採用担当の方が、「信頼している経営者が主催している医療介護系の会があるから行ってみない?」と声をかけてくれたことでした。
ソフィアさんが運営しているそのイベントで、同社代表の林田と出会い、そこから北村さんとのご縁につながりました。
北村:
そうですね。オンラインで初めて長内さんとお話ししたのは2023年夏頃だったと思います。
そのあと、10月に対面でミーティングを行い、「早期経営改善計画策定(※1)」の支援として事業計画を一緒につくることになりました。
――出会った当時、事業計画はどの程度かたまっていたのでしょうか?

長内:
今振り返ると…実質、事業計画は「なかった」ですね(笑)。
北村:
ただ、その代わりに「これはいける」と思ったポイントがありました。それは、きちんと損益計算書(PL)を自分でつけていたことです。売上は決して大きくない時期でしたが、毎月の数字をちゃんと記録していて、決算書と当期の状況もすぐに答えられた。
これは、事業の基本ができているということです。PLを見れば、どこに課題があるかがある程度わかりますから、アドバイスもしやすいんですね。
一方で、「このまま放っておくと、この人は全部自分で抱え込んでしまうな」とも感じました。だからこそ、一人で頑張る個人事業から、仲間と一緒に事業を広げる“会社”へのステップを一緒に描いていこうと決めました。
(※1)早期経営改善計画策定支援…中小企業・小規模事業者が資金繰りや採算管理などの経営課題を克服するため、専門家(認定経営革新等支援機関)の助けを借りて経営改善計画を策定する国の制度。ソフィアは支援機関に登録されている。
富裕層・フットケア・仲間づくり――事業計画の具体的な中身
――実際には、どのようなステップで事業計画をつくっていったのでしょうか。

北村:
大きくは、次の3つに注力しました。
- 一人で抱え込まないための“仲間づくり”の前提設計
長内さんの場合、一人で100%以上頑張ってしまうタイプなので(笑)、
最初から「仲間と一緒に仕事を回していく」前提で長期的な事業計画を描くことにしました。 - ターゲットの明確化:富裕層へのシフト
介護美容は、「余裕がないと手が届きにくいサービス」でもあります。
だからこそまずは、ある程度所得のある層をターゲットにしたほうが、事業として安定しやすいと考えました。
ターゲット事業領域区分の図(北村氏が作成した事業計画書より抜粋) - フットケア(足の爪ケア)という専門メニューの追加
私自身、クライアント様のサポートで老人ホームを定期訪問するなかで「フットケアに困っている高齢者が多いのに、きちんと対応できる人が少ない」という課題を感じていました。
そこで、「フットケアはこれから必ずニーズが高まる」と考え、長内さんに提案しました。
長内:
フットケアについては、正直かなり迷いました。
適切なアセスメントが必要、疾患によっては施術できない、感染対策の徹底…と、リスク管理が重要で、難易度もかなり高いからです。
でも、
・お客様の足を見たときに「何とかしてあげたい」という気持ちがあったこと
・北村さんからのアドバイス
・同じ分野で既に取り組んでいる仲間がいたこと
この3つが背中を押してくれて、思い切って専門スクールに通い、メニュー化しました。
今では、フットケアは単価も高く、専門性・信頼性の面でも大きな柱になっています。
「仕事を超えて応援してくれる」伴走型コンサルの力
――北村さんと伴走してよかったと感じる点を教えてください。
長内:
3つあります。
1つ目は、仕事を超えて親身になってくれることです。
単に契約上必要な範囲だけでなく、「こんな会があるから行ってみたら?」「この人とつなげたい」などと、常にアンテナを張って情報をくださる。イベントにも足を運んでくださって、本当に「応援してくれている」と感じます。
2つ目は、豊富な経験にもとづくアドバイス。
一人で悩んでいると、「自分の性格のせいでうまくいかないんじゃないか」とネガティブに捉えてしまいがちですが、「それはビジネスあるあるです」「それは多くの人が通るプロセスですよ」と言ってくれて、経験から様々と対処法を教えてくれることで、気持ちがすごく楽になります。
3つ目は、未知の業界でもきちんと調べたうえで具体的な提案をしてくれること。
介護美容やフットケアは、北村さんにとっても初めての領域だったはずなのに、毎回のアドバイスが「どんぴしゃ」なんです。きっと裏側でたくさんリサーチしてくださっているんだろうな、と感じています。
関東一位から、青森、そして世界へ
――北村さんとの対話を通じて「会社にする、仲間を増やす」という大きな方向性が見えたかと思いますが、今後の展望をお聞かせいただけますか?
長内:
はい。今の自分の目標は、まずは「関東一位の介護美容の会社」になることです。
そのうえで、最終的には地元・青森にも事業を広げたいと思っています。
都会と地方では、高齢者サービスの選択肢や、介護美容のような「プラスの楽しみ」に触れられる機会に、まだまだ大きな差があります。「都会だからできること」ではなくて、「地元にいながら、”きれいでいることをあきらめなくていい社会”」をつくりたいんです。
今、同じ介護美容のコミュニティ仲間の中には、地方でもしっかり会社として成立させているロールモデルになる人がいます。その姿を見ると、「青森でもできるはず」と勇気づけられます。
北村:
地方創生という観点でも、長内さんのビジネスには大きな可能性があります。
地方創生のストーリーで大事なのは、
・若い世代が、わざわざ東京に出なくても
・地元で仕事があり、生活できて
・そこで結婚し、子どもを育てられる
そういう「当たり前の生活」が地方でも成り立つことです。
介護美容のような仕事が各地で広がれば、
・地域の高齢者が元気でいられる
・介護現場の選択肢が増える
・若い世代、とくに女性が地元で働き続ける職域が増える
という意味で、「福祉」と「雇用創出」の両面から地方を支える存在になり得ます。
「関東一位」から「東日本一位」、そしていつか世界へ――。
ちょっと大きな話をしてしまいましたが(笑)、長内さんなら、そのくらいのスケールで考えてもいい起業家だと思っています。
第三者との対話を通じて事業成長へ――読者へのメッセージ
――最後に、このコラムを読む起業希望者・起業初期の方へメッセージをお願いします。
長内:
一人で悩まず、誰かに相談することの一番のメリットは、「事実と解釈を整理してもらえること」だと思います。
自分一人で考えていると、専門知識も足りないし、感情も入るので、
「こうに違いない」という“思い込み”がどんどん強くなってしまいます。
そこに、経験のある第三者が入ることで、
・まず事実を整理し
・そのうえで道筋を一緒に描いてくれる
そういう存在がいると、思考がクリアになって、一歩前に進みやすくなります。
もし、今回のお話のどこかに少しでも共感してくださる部分があれば、ぜひ一度、相談してみてほしいなと思います。
ソフィアの創業支援・インキュベーション施設「フェムベース池上」のご案内
ソフィアでは、長内さんのように「思いはあるけれど、どう形にしていいかわからない」という方のために、プロのコンサルタントによる事業計画の策定支援を行っています。
今回長内さんが利用した「早期経営改善計画策定支援」を活用すると、計画策定する場合の専門家に対する支払い費用の2/3を国が補助してくれます(ただし金融機関(銀行)の事前確認書が必要)
金融機関の確認などを必要としないソフィア独自の「事業計画リ・デザインプログラム」は、北村氏が事業計画策定を伴走します。
どちらのサービスも事業計画づくりの壁打ちをしたい方、資金調達のために説得力ある事業計画書を作りたい方、新しい事業アイデアを形にしたい方にぴったりですので、ぜひご活用ください。
また、今回の対談の舞台となった「フェムベース池上(東京都大田区)」は、ソフィアが運営する起業・キャリアを応援する東京都認定のインキュベーション施設です。
当施設では、目的に合わせて以下の3つのプランを提供しています。
- コワーキングスペースプラン(5,500円(税込)/月)
- バーチャルオフィスプラン(3,300円(税込)/月)
- イベントスペースプラン(1,100円(税込)/月)
コワーキングスペースは24時間いつでも利用可能で、会議や商談にもお使いいただけますバーチャルオフィスは、自宅の住所を知られたくないひとり社長や副業にもぴったりです。イベント利用では、施設内にあるホワイトボードやスクリーンなどの備品はもちろん、屋上も使用可能で、交流の場としても最適です。


コワーキングスペースとイベントスペースのイメージ
東京近郊の方はもちろん、
「ゆくゆくは地元に事業を持ち帰りたい」「地方からでも挑戦したい」という方のご相談も歓迎しています。
- 「起業したいけれど、何から始めていいかわからない」
- 「アイデアはあるけれど、事業計画に落とし込めていない」
- 「一緒に走ってくれる仲間や相談相手がほしい」
そんな方は、ぜひ一度ソフィアの創業支援にお問い合わせください。
■創業支援事業(早期経営改善計画策定支援・事業計画リ・デザインプログラム)に関するお問い合わせはこちら
⇒https://sophiacommunications.net/contactpage/
■フェムベース池上の詳細&お問い合わせはこちら
⇒https://femmebase.net/



